心に染み入る素晴らしい歌声の持ち主が32歳の若さで亡くなるに至った経緯を知りたくて読みました。カレンの命を奪ったのは神経性食欲不振症という病気です。圧倒的に女性に多い難治性の疾患です。精神力動的な根深い原因があり、治療はいまだ容易ではありません。致死率は5-20%と言われています。
カレンの家庭の特殊事情(母のアグネスは厳格な女性でかつ兄のリチャードを溺愛していた)、早すぎる途方も無い成功、忙しすぎる音楽活動、不幸な恋愛、etc.原因はそのどれかもしれないし、あるいはどれでもないかもしれません。結局原因がわかったところで喪失の困惑と怒りと悲しみが軽くなる訳ではありません。とにかくカレンは巨大な恐ろしい病と闘いながら、あの美しい歌声で歌っていたのです。カーペンターズにとって最も重要な曲は「We've only just begun」(愛のプレリュード)だったことがわかり納得でした。しかし最後まで読み通すのに時間のかかったつらい読書でした。
2016年07月01日
カレン・カーペンターー栄光と悲劇の物語
posted by gomeisa at 11:47| 読書
2016年06月22日
伊澤保穂著「陸軍重爆隊」
陸軍の重爆撃機隊の歴史が詳しく綴られ、貴重な写真が満載です。驚いたことに著者は眼科医でしかも近くの山梨医大に勤務していたのです。もしかしたら会っていたかもしれません。医者がなぜここまで詳しく誰も書かないような重爆撃機の戦史を書いたのかは謎です。それにしても貴重な本です。
posted by gomeisa at 16:58| 読書
2016年05月22日
2016年01月11日
「零戦燃ゆ」柳田邦男著
柳田邦男の「零式戦闘機」は零戦の技術論で大変おもしろく読みました。「零戦燃ゆ」はその零戦の大東亜戦争での運用(つまり太平洋戦争の経過)を扱った著作で文庫本6冊に及ぶ大部の作品です。生き残っている零戦乗りの貴重なインタビューを含む力作です。約半分まで読みましたが、読んでいて辛くなりました。初めは日本陸海軍中枢の無能無策ぶりに腹が立ちましたが、だんだん、米国の戦争を起こし相手を徹底的に叩き潰す性質・能力がおぞましくなってきました。元はといえば日露戦争で予想外に勝ち、中国での権益を伸ばしつつある日本を潰したくてうずうずしていたのは米国です。その上で、あれだけの軍備を備えて戦争したら、馬鹿でも勝てるよというのが今のところの私の感想です。一方軍中枢が無能無策だったとはいえ、日本軍末端の兵士は絶望的な負けいくさをよく戦ったのです。しかし国・軍中枢にしても過酷な軍備縮小条約やハル・ノートを一方的に押し付けられて、当時他にどんな選択肢があったのでしょう?とりあえず今日は新年初の"毒"を撒いて終わります。「零戦燃ゆ」を全編読み終えたらまた書きます。
posted by gomeisa at 21:11| 読書
2015年09月15日
「恋歌」朝井まかて著
西尾幹二氏の「GHQ焚書図書開封」の最新刊「維新の源流としての水戸学」に触発されて読みました。維新前夜の水戸藩の凄惨な内乱「天狗党の乱」をほぼ史実通りに描いています。「萩の舎」中島歌子女史の恋の経緯も事実に基づいているようです。史伝としても恋愛ものとしてもやや中途半端な感のある小説でした。そうはいっても昨日から今日にかけて一気に読めたので、それなりに面白かったのでしょう(他人ごとのようにそっけなく)。
posted by gomeisa at 15:56| 読書
2015年08月01日
GHQ焚書図書開封〈7〉戦前の日本人が見抜いた中国の本質
非常に示唆に富んだ本でした。"戦前の日本人"とは長野朗(あきら)という在野の学者です。長野朗氏の著書は18冊がGHQによって焚書にあっています(3番めの多さ)。内容が過激とかではなく、恐らく分析が鋭利で内容が的確すぎたのでしょう。この本を読んで、まさに目から鱗が落ちる思いがしました。全てが納得できるのです。支那人(漢民族)とはげに恐ろしい民族です。アングロサクソンとは違う意味で恐ろしいです。米国が戦争を仕掛けてきたのは1世紀近く前でした。今米国は経済を除いて日本と軍事的な戦争する意味がありません。しかし、膨張する支那はどうでしょうか。日本と戦争する気は満々に見えます。ひとつだけ言えば、支那人の侵略方法はまずその多すぎる人口を使うことです。今日本に居る中国人は100万人弱でしょうか。増え続ける得体の知れない中華料理店。恐ろしいですね。尖閣、沖縄がきな臭い現在、日本人必読の書です。
posted by gomeisa at 22:07| 読書
2015年07月03日
GHQ焚書図書開封5 ハワイ、満州、支那の排日
西尾幹二氏の「GHQ焚書図書開封」シリーズの5です。ハワイの歴史など興味深いです、米国の絶え間ない圧力に抗するためハワイ王朝カラカウア王(在位1874-91)が日本皇室に姻戚関係を求める話も当然出てきます。満州の実情、支那人の本質も興味深いです。シリーズの中でも出色の本です。それにしても「GHQ焚書図書開封8 日米百年戦争 ~ペリー来航からワシントン会議」が新刊で出てこないのは何故?それほど人気とも思えないし、現代の焚書だろうか?
posted by gomeisa at 21:04| 読書
2015年03月12日
「黙の部屋」 折原一 続き
昨晩読み終わりました。前半の異様な緊張感に比べて後半のトリックはやや尻すぼみ感がありました。これはミステリーではなく美術小説なのでしょう。石田黙に取り憑かれた作者の熱さは伝わってきます。著者は何と石田黙作品を多数所有し、2007年に展覧会を開いています。無名の実在した画家を取り上げている小説は類例がなく極めて特殊です。Amazonの書評は微妙ですが、私はこの作品は好きです。
posted by gomeisa at 08:03| 読書
2015年03月10日
2015年02月16日
「帰ってきた二式大艇」碇義朗著
二式大艇は川西航空機が製造したWW-IIの最高傑作飛行艇です。本書はPS-1から始まる戦後の二式大艇の子孫の話です。最近では辛坊キャスターの救出劇で一躍有名になった海難救助飛行艇US-2が現役の子孫です。
2013年6月21日全盲のヨットマン岩本光弘とともに太平洋横断を試みていたキャスター辛坊治郎は宮城県の金華山南東約1200キロの洋上で遭難。浸水のためヨットを放棄しライフラフトに乗り移った。救助のためUS-2が2機、P-3Cが2機現場へと向かった。1機目のUS-2は高波のため着水を諦め帰投。2機目のUS-2は波高4mの悪条件の中着水し、辛坊治郎らを救助した。この際4個のエンジンのうち1個はフレームアウト(停止)というから、機長ぎりぎりの決断だったことがうかがえる。
US-2は3mの波高まで着水でき、航続距離は4500km、世界に唯一無二の高性能飛行艇なのです。そのUS-2を作ったのは新明和工業、二式大艇や紫電改を製造した川西航空機の後裔です。川西航空機は中島飛行機に勝るとも劣らないすばらしい飛行機製造会社でした。この本は敗戦で全てを失った川西航空機が戦後いかにしてまた飛行艇を作るかの話です。城山三郎の「ゼロからの挑戦」と合わせて読むといいですね。
2013年6月21日全盲のヨットマン岩本光弘とともに太平洋横断を試みていたキャスター辛坊治郎は宮城県の金華山南東約1200キロの洋上で遭難。浸水のためヨットを放棄しライフラフトに乗り移った。救助のためUS-2が2機、P-3Cが2機現場へと向かった。1機目のUS-2は高波のため着水を諦め帰投。2機目のUS-2は波高4mの悪条件の中着水し、辛坊治郎らを救助した。この際4個のエンジンのうち1個はフレームアウト(停止)というから、機長ぎりぎりの決断だったことがうかがえる。
US-2は3mの波高まで着水でき、航続距離は4500km、世界に唯一無二の高性能飛行艇なのです。そのUS-2を作ったのは新明和工業、二式大艇や紫電改を製造した川西航空機の後裔です。川西航空機は中島飛行機に勝るとも劣らないすばらしい飛行機製造会社でした。この本は敗戦で全てを失った川西航空機が戦後いかにしてまた飛行艇を作るかの話です。城山三郎の「ゼロからの挑戦」と合わせて読むといいですね。
posted by gomeisa at 22:05| 読書
2014年12月07日
「零からの栄光」城山三郎
随分古い本です。飛行機製造の東の雄が中島飛行機だとすれば、西の雄は川西航空機になります。中島飛行機の本は少しはあるけれど、川西航空機の本は極端に少ないですね。そんな中城山三郎のこの本は川西航空機を知る貴重な本です。中島から見ると川西は袂を分かったライバルですので、良い印象はありませんが、この本を読むと川西の凄さがよくわかります。たたき上げで一代で財を成した川西清兵衛の次男の竜三は初め飛行機に特に関心はなかったものの、川西航空機をまかされるとその魅力に取り憑かれて、普段は銭、銭とうるさい吝嗇家なのに売れるあてのない飛行機開発にお金を湯水のように注ぎ込みました。優秀な設計者も集まり、ついに太平洋戦争時の飛行艇の最高傑作「二式大艇」を生み出すに至りました。戦争末期海軍機で唯一グラマンに対抗できた戦闘機「紫電改」も川西製です。厳しい戦後の混乱を何とかしのぎ、会社は新明和工業となり、製造する商品も多岐にわたる会社になりましたが、伝統は失われず、あの辛坊キャスターを海難事故から救って有名になった海難救助艇US-2は紛れもない二式大艇の子孫です。さて、二式大艇のプラモも早く作りましょう。
posted by gomeisa at 19:47| 読書
2014年11月24日
伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」
車のタイヤをスタッドレスに交換してもらっている間に近くの本屋さんで手にとって買いました。何だか暖かい気持ちになる短篇集です。伊坂にしては珍しい恋愛と出会いがテーマですが、本人があとがきで述べているように「泥棒や強盗、殺し屋や超能力、恐ろしい犯人、特徴的な人物や奇妙な設定、そういったものがほとんど出てこない」のにやはり伊坂幸太郎作品になっています。気取ったセリフもそう気にならず楽しめました。
posted by gomeisa at 17:25| 読書
2014年11月19日
2014年11月07日
狼の牙を折れ
安倍首相が枝野と国会でやりあった後、タイミングを計ったようにFacebookで紹介するや、ネットではどこも売り切れの門田隆将著「狼の牙を折れ」が偶々近くの本屋さんにあり、買い求めました。淡々と公安警察と左翼爆弾テログループとの闘いを描いた本です。何だか盛り上がりに欠け面白くはありませんでしたが、1970年代の反権力に浮かれた危うい世相はよくわかりました。しかし、この闘いは終わった訳ではなく、三菱重工爆破事件など11件の連続爆破事件を起こし、この時逮捕された7人の犯人のうち2人はその後の海外テロに伴う超法規的措置によって国外に釈放され、今もシャバに居るのです。闘いはまだ続いているのです。また最近のネット右翼にはブサヨと揶揄されながらも、この頃は若かった団塊の世代の反権力メンタリティーも、そこここで連綿と続いているように見受けられます。
posted by gomeisa at 11:30| 読書
2014年10月22日
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」
吉田篤弘氏のこの本は、読後"ほっこり"するという言葉がふさわしい物語です。人物造形がいいです。しかし、続けて読んだ「つむじ風食堂の夜」、これは活字数の少なさだけでなく内容もひどく薄くて損した気分になりました。吉田篤弘氏の本はこれで終わりかな。
posted by gomeisa at 20:01| 読書
2014年09月23日
2014年08月11日
蛍の航跡
本屋さんに平積みしてあった帚木蓬生氏の「蛍の航跡 軍医たちの黙示録」を読んでいます。とにかく悲惨過ぎて読むのがつらいです。帚木氏があとがきで書いています。「私は旧日本軍が拡げた版図の大きさに圧倒される。・・・日本軍の将兵は、風呂敷のように拡げられた身不相応の版図に、点々とばらまかれた。」途方もない版図に拡げられた戦線に兵站が追いつくはずもなく、末端の兵士を待つのは飢餓と病気です。確か「失敗の本質」の中で紹介されているロシア将校の言、「日本軍は兵士は勇猛果敢で優秀だが、中枢は無能で無責任」は本当です。帚木氏は戦後生まれの精神科医兼作家です。実際に戦争は経験していないのにリアルな筆致には驚かされます。綿密な資料の読みに由来するのでしょう。水木しげるの名作「総員玉砕せよ」を思い出し、本棚からまた引っ張りだしました。

これは文庫版ではなくハードカヴァー本の表紙

これは文庫版ではなくハードカヴァー本の表紙
posted by gomeisa at 10:38| 読書