2015年12月02日

被角血管腫

この聞きなれない名前の病気は皮膚の良性血管腫で、加齢性の変化といわれています。Angiokeratoma scrotiとなると男性のみの場所にできる病変で、症状は突然の出血です。あまり治療法がない病気ですが、試しに桂枝茯苓丸を出していたら出血は止まり、ついに病変も消えたと喜ばれました。血管腫なので桂枝茯苓丸の駆お血作用が良かったのでしょう。
posted by gomeisa at 15:29| 漢方

六君子湯のロスト・ツー

六君子湯は四君子湯に陳皮、半夏を追加した処方です。四君子湯は甘草、大棗、生姜、人参、茯苓、白朮の六味からなる処方。あれ、どちらも君子が二人いない?矢数道明先生によれば、二人のカウントされない君子は、大棗、生姜なのだそうです。昨日飲み会の席で聞かれて(レベルの高い質問ですね)、もうひとつはっきり覚えていなかったので、調べなおしてみました。
posted by gomeisa at 15:28| 漢方

2015年09月15日

加味逍遥散

当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散は漢方の「駆お血剤」の御三家ですが、当院では最近加味逍遥散の使用量が多いと薬剤からいわれました。加味逍遥散はストレス対処薬という色合いの濃い薬方です。そういう方が多いのでしょう。御三家ではありませんが、同じ「駆お血剤」では最強の桃核承気湯は頑固な便秘症の方に時々使っています。合う方にはすごく良い薬方です。
posted by gomeisa at 15:58| 漢方

2015年07月14日

清暑益気湯

清暑益気湯は夏バテの薬として有名な漢方です。私自身は出したことがないのですが、今日MSが来て勧めるのでその構成生薬を見てみました。同じ目的で使われる補中益気湯と比較すると両者よく似ていますが、清暑益気湯には五味子、麦門冬、黄柏が入っています。五味子は小青竜湯にも入っている生薬で温める作用があります。麦門冬は咳の薬ですがどちらかというと体力をつける生薬です。黄柏には消炎・健胃作用があります(処方名に含まれている「清暑」は黄柏が担っているのでしょうか)。また補中益気湯に入っている柴胡、升麻は逆に入っていません。補中益気湯より温める作用、体力増強作用、胃腸を良くする機能を強化した薬方です。今のような梅雨時の意外に寒い時期、胃腸機能が低下して体力が落ちた暑い夏に良い漢方薬といえそうです。
posted by gomeisa at 11:46| 漢方

2015年02月17日

当帰四逆加呉茱萸生姜湯

今年も足先に少し霜焼けができ、先日から定番の漢方薬「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を飲んでいます。患者さんにはよく出していますが実は自分で飲むのは初めてです。呉茱萸が入っているのですごい味を予想していましたが、意外にまずくないというのが第一印象です。手足はすぐに暖かくなる感覚がありました。就寝後は逆に手足がぼかぼかと熱い不快感まであり、手元にあった"手足煩熱"に効く三黄瀉心湯を昨晩は飲みました。当帰四逆加呉茱萸生姜湯には色々驚かされました。患部には紫雲膏も塗り、私の霜焼けはかなり良くなりましたよ。
posted by gomeisa at 19:55| 漢方

2014年10月03日

漢方の勉強会にて

今晩は某漢方メーカーの勉強会に出てきました。漢方をどう使うか、ハウツー的な知識をフローチャート方式で説明していました。そこここに工夫は感じられて、まあそう悪くはなかったのですが、ひとつ聞き捨てならない発言がありました。甘麦大棗湯の説明で、「本番に弱い人、えーとフィギュアの真央ちゃん、これを飲んでいたら金メダルだったでしょう」とのたまったのです。真央ちゃんは本番に弱いんですか?ソチのショートのことを言っているのでしょうが、フリーでの大成功はどうだったのですか?金メダルをとるのがそんなにエライんですか。ソチで一番の感動は真央ちゃんだったのではないですか?これを聞いた後、何だか講演の内容も薄っぺらく思えてきて(実際Science漢方とか、薄っぺらいですが)、釈然としない気持ちで帰途につきました。この点について質問をすればよかったかな?
posted by gomeisa at 22:51| 漢方

2014年06月29日

講談和田啓十郎先生伝

日本東洋医学会学術総会に出てきました。今年の市民公開講座は講談師神田香織さんによる和田啓十郎先生伝というユニークな企画でした。和田啓十郎先生は漢方を専門にしている人なら知らない人はない漢方の大恩人です。明治期の漢方撲滅の危機の時代に、漢方を擁護する「医界の鉄槌」を著し、僅か45歳で亡くなられた医師です。この本の出版によって漢方復活ののろしが上がったのです。ある程度は知っていた和田啓十郎先生の生涯も講談の形で聞くとまた新鮮でした。何故講談にという疑問がわきますが、それは軽妙な前座?講演をされた三浦於菟先生が仕掛け人だったようです。もう12年前から依頼されていたと神田香織さんが講談の前に話されていました。
posted by gomeisa at 21:02| 漢方

2014年04月14日

漢方薬の適応症変更

当院で使っているコタロー漢方薬のいくつかの処方で適応症が変更されました。例えば黄連解毒湯には高血圧、湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症が追加されました。これまさに私が黄連解毒湯を使う時の病態です。
一般に漢方薬は適応症にとらわれずに、患者さんの状態に合わせて自由に方剤を使うのが大きな特色です。風邪にも肩こりにも乳腺炎にもみな葛根湯で対応なんて普通は考えられませんよね。薬と効能を一対一で対応させている保険診療とは大変馴染みにくい考え方です。漢方薬を初めて出した後、患者さん自身がインターネットなどで出された漢方薬の効能を調べられて、自分の症状とぜんぜん違う効能が書かれているんですがと問い合わせてこられる場合が時々あります。漢方薬の使い方はだいぶ西洋薬とは違うので、その点ご理解をお願いしたいところです。今回のような実態に則した効能の追加は、余分な説明が省けて大変ありがたいです。
posted by gomeisa at 18:54| 漢方

2013年09月19日

食養生

今晩は診療終了後、漢方の講演会に行ってきました。テーマは「漢方薬の効果を引き出す生活指導〜医食同源の観点から〜」です。講師は日大の上田ゆき子先生です。当院でも漢方診療をしていますが、食養生までなかなか踏み込めていないのが現実です。暖める食事と冷やす食事という観点から、症例提示を主体にした講演でした。ともするとファナティックになりやすい食養生ですが、上田先生はごく常識の範囲内で良い講演でした。とんでもない食事が治療の足を引っ張っている例を聞いて、当院でも食事内容調査をしてみようかと思いました。アトピー性皮膚炎の治療では、私も砂糖の制限を常々言っていますが、上田先生も精白糖の制限の重要さを言っていました。残念ながら多くの人の好物であるスウィーツは健康の大敵なのです。
食養生の要点は伝統的で常識的な食事をすることです。特定の食物が良いと偏った食事をすると、思わぬしっぺ返しがあるものです。
posted by gomeisa at 22:28| 漢方

2012年10月24日

慈温堂遠田医院が大阪狭山市に移転

2年前まで私も月に1回診察に行っていた大阪の漢方専門医院「慈温堂遠田医院」が難波から大阪狭山市に移転しました。煎じ薬のみを良心的な価格で提供する貴重な医院です。近くの方も、また遠方の方もぜひご利用ください。
posted by gomeisa at 02:57| 漢方

2012年08月08日

漢方薬とドーピング

ツムラのサイトに時節柄、漢方薬とドーピングの記事がありました。
ドーピング禁止薬物となる漢方薬は
麻黄は有名ですが、半夏、陳皮、麻子仁なども問題となると初めて知りました。

その後麻子仁、半夏は該当しないと訂正されています。色々意見があったようです。(8/22追記)
posted by gomeisa at 11:39| 漢方

2012年06月19日

アトピー性皮膚炎に苓桂朮甘湯

苓桂朮甘湯をアトピー性皮膚炎に使うのは漢方をよく知っている医師ならかなり驚かれる使い方だと思います。苓桂朮甘湯は低血圧に由来するめまいや動悸などに使うのが最も一般的な使い方です。私の場合なぜこの処方をアトピー性皮膚炎に使うかというと、ぶっちゃけ漢方の師匠にそう習ったからです。ではどのようなアトピーの患者さんにこの処方を使うのかですが、やはり処方の性格上虚証の方です。虚証の方でも白虎加人参湯などが行く場合もあるのですが、立ちくらみや車酔いしやすいなどの症状があれば参考になりますし、最後はやはり言葉に表現しにくいのですが、全体の感じからそう判断するとしかいえません。効く人には本当によく効く薬方です。
posted by gomeisa at 16:48| 漢方

2012年02月24日

「吉益東洞の研究」が届いた

昨日「吉益東洞の研究」が届いた。帯を見て驚いた。「一病万毒」?「万病一毒、毒をもって毒を制す」は東洞の有名な治療理論だ。これあきらかにミスだよなー。岩波書店には伝えたが、この出版社には漢方に詳しい編集者はいないのだろうか。呆れた。中味はまず東洞の時代背景から入る重厚な構成だ。いきなり帯にめげたが、頑張って読み進んでみよう。
posted by gomeisa at 10:19| 漢方

2012年02月21日

吉益東洞の研究

「吉益東洞の研究」を注文してみた。寺澤捷年著、岩波書店刊行。価7,350円はいかにも高価だが、はたして中味は。
東洞は漢方古方復興の祖。古方というが、日本にはまず後世方が入り、古方は東洞が復活させた療術だ。漢方の世界では毀誉褒貶あれどともかく一級の人物だ。
読後感はまた後日。
posted by gomeisa at 22:19| 漢方

2010年11月24日

乾燥肌には四物湯

この時期になると皮膚の乾燥から痒みが出て、湿疹になることが多いです。皮脂欠乏性湿疹といいますが、いわゆる乾燥肌です。この症状には漢方では四物湯がよく効きます。四物湯は冷えや更年期障害の薬ですが、皮膚の乾燥症状にも大変よく効きます。四物とは当帰、センキュウ、芍薬、地黄を指します。いずれも冷えをとるような生薬です。
posted by gomeisa at 14:44| 漢方

2010年07月30日

ドライアイには麦門冬湯

アラマタ先生が入浴中に読書するのが好きなのは、実はドライアイのせいだそうです。ドライアイの漢方薬といえば麦門冬湯です。麦門冬湯は咳の薬として知られています。気道の分泌を増やす事によって喀痰の排出を容易にする作用がありますが、気道だけでなく色々な部分の分泌を増やす作用があります。涙腺の分泌も増やしてくれる結果ドライアイの症状が軽減します。お試しあれ。
posted by gomeisa at 09:32| 漢方

2010年06月23日

五苓散の季節

蒸し暑い日が多く、まだ暑さに体が十分慣れていないせいか、熱中症や暑気あたりが多い時期です。漢方的には五苓散という薬がこうした病態には良いです。五苓散は漢方の利尿薬といわれますが、西洋薬と大きく違うのは脱水症状をむしろ改善する効果があることです。利尿薬ではなく水分調節剤といった方が正確です。この薬を飲むとあっという間に頭痛が治ります。スポーツ前に脱水予防で飲むこともできますし、二日酔い予防薬にもなります。
posted by gomeisa at 10:10| 漢方